吉本興業をめぐる一連の問題をめぐり「経営陣が刷新されなければ、吉本興業を辞める」と宣言していた、お笑いコンビ「極楽とんぼ」の加藤浩次氏は7月23日夜、同社の大崎洋会長に直談判に及んだ。
ところが翌日「合致点がなかなか見つからなかった」として、退社については一旦、保留する意向を明らかにした。

自身が（吉本興業のタレントとして出演している）テレビ番組の中で、事務所の経営陣を直接的に批判し、「（退所の）意思は固い」と宣言しておきながら、
一転して保留するという事態になったことついては、当然のことながら賛否両論が出ている。

「辞める、辞める」と周囲に公言する行為というのは、一種の承認欲求と考えれば理解しやすいだろう。自身の立場や苦労というものについて、会社の上司あるいは同僚に知ってほしいという強いメッセージである。

逆に言えば、承認欲求が満たされるのであれば、その人は、もともと離職する意思は薄いので、残留する可能性が高い。一方、承認欲求が満たされないことがハッキリすると、不本意ながら退職する結果になりやすい。

従業員と会社の間には、法律上は雇用契約が存在するのみだが、「社員は家族である」と公言する企業が存在していることからも分かるように、日本では良い意味でも悪い意味でも、情緒的でウェットな関係になっていることが多い。
「辞める、辞める」という自己アピールに対して、上司が「まあまあ」と説得するというやり方は、昭和の時代まではうまく機能したが、価値観が多様化している現代においては、こうした組織はマネジメントが徐々に難しくなっている。
実際、加藤氏の言動に対しては、一部の若手芸人からは冷ややかな反応も出ているようだ。